みんなの小さな幸せ日記

みんなの小さな幸せ集めました。

一人で食事をしないこと

単身、故郷を離れて一人暮らしをはじめた頃は、好きな時間に好きなものを食べられることが、自分にとって最高の幸せだと思っていました。


地方の大家族の中で育ち、日頃の生活に様々な制約があること、近所の目を気にしながら生きていかなければならないことが、とても息苦しく、苦痛だったのです。


そんなストレスのはけ口になる食事でさえ、時間もメニューも決められるまま。そんな生活から早く抜け出したくて、一人暮らしを選びました。


でも、やがて恋人ができ、二人で食事をするようになった頃、今までとは違う感情が自分の中に芽生えているのを感じました。一人より、二人の方が、同じものを食べるにしてもずっと美味しく思えるのです。自由を求めて一人暮らしを選んだはずなのに、この感情は何なのだろうと、とても不思議に思いました。

 


やがてその恋人と結婚し、長い間、食卓はささやかな憩いの場として自分の心の癒しとなっていきました。自分が胆石を患い入院した時も、妻はずっと付き添ってくれ、食事の時間には、わざわざ自分用の弁当を持ってきて一緒に過ごしてくれました。


その時、改めて気付いたのです。たとえ味気ない病院食でも、一緒に食べる時間を共有してくれる人がいることが、何よりのご馳走だということを…。


実に陳腐なことですが、人生においてこれほど大切なことがあるだろうかと、今となっては思います。贅沢はしなくてもいい。

一番大切な人と、健康に過ごしていける幸せ。私にとってその象徴が、他でもない、妻と笑顔で過ごせる食事の時間だったのです。